人間の構成要素
荒川弘先生が描いた「鋼の錬金術師」という漫画で、人間を生き返らせる禁忌の錬金術を使う場面がありました。
そこでは「大人1人分の構成要素」について、
『水35リットル、炭素20kg、アンモニア4リットル、石灰1.5kg、リン800g、塩分250g、硝石100g、イオウ80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3g、少量の15の元素・・・』
のように人の体の構成要素としてケイ素が登場しています。
また、「元素111の新知識」(桜井弘/講談社)では、人体を構成する元素とその含有量について
『酸素65%、炭素18%、水素10%、窒素3%、カルシウム1.5%、リン1%、イオウ0.25%、カリウム0.2%、ナトリウム0.15%、塩素0.15%、マグネシウム0.15%、鉄0.009%、フッ素0.004%、ケイ素0.003%、他にごく微量の20元素…』
が必要だと記しています。
どちらも数値の違いはあるものの人間を構成する要素として「ケイ素」が登場していることが分かります。
私たち人間のからだを構成する元素たち
私たちのからだは、大部分の水とさまざまなミネラル元素で構成されています。
前述のとおり人間を構成する元素で表すと、次のようにまとめることができます。

まず、酸素61%、炭素23%、水素10%、窒素2.6%、カルシウム1.4%、リン1.0%の6つの元素を主要元素または多量元素と呼びます。
次に、イオウ0.2%、カリウム0.2%、ナトリウム0.14%、塩素0.12%、マグネシウム0.027%の5つの元素を少量元素または準主要元素と呼びます。
次に、ケイ素0.026%、鉄0.006%、フッ素0.0037%、亜鉛0.0033%、銅0.00001%の5つの元素を微量元素と呼びます。
そして、スズ0.00002%、マンガン0.00001%、ニッケル0.00001%、モリブデン0.00001%、クロム0.000009%、コバルト0.000002%の6つの元素を超微量元素というように呼びそれぞれの元素を大きく4つに分類しています。
上記の分類で、ケイ素は人間の構成元素としては微量ながら必須元素であることが分かります。
全身のいたるところに存在しているケイ素
それではこのケイ素が人間のどこに存在しているのでしょうか?
体内組織でケイ素が多く分布しているのは、リンパ節、歯、肺、筋肉、腎臓、肝臓、脳、睾丸、血液、毛髪、爪、骨、血管、皮膚など全身の組織に存在していることが分かっています。

人間の体のいたるところに存在していることから、ケイ素は人体にとって書くことができない元素ということができます。
体内で重要な役割を担うケイ素
人間の体内で重要とされる臓器類は、酸化による老化を防ぐためにケイ素で守られています。
ケイ素は人間の体内のいたるところに存在しています。
血管 | 胸腺 | リンパ節 | 肺 |
松果体 | 脳 | 肝臓 | 腎臓 |
卵巣 | 睾丸 | 皮膚 | 筋肉 |
骨 | 髪 | 歯 | 目 |
爪 |
ケイ素が体内でどのような働きをしているかについて下記にまとめています。
- 血管動脈をしなやかに形成し、動脈硬化を防ぐ
- リンパ節や胸腺の動きを良くし、抗がん力を強化する
- 栄養吸収されたカルシウムを骨芽細胞(造骨細胞)にし、骨組織の形成、骨密度・骨質を上昇させて体液の酸性体質(酸化)をアルカリ体質(還元)にして健康維持と精神力を養います
- 人体に欠かせないコラーゲンを増殖させ、皮膚の弾力性を保ち関節を守る。特に骨質を改善する
- ケイ素が不足すると発育障害、皮膚障害、関節、骨の形成不全、頭蓋骨の異常など、さまざまな箇所に問題が生じます
- 全身にある60兆個の各細胞に共生しているミトコンドリアを増殖してエネルギー代謝(生命力)を作ります。(※ミトコンドリアを構成しているのはケイ素です)
- DNAの長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)の機能を発現させるスイッチをONにすることができる
臓器別に見た必要栄養素まとめ
人間のからだの各臓器や器官はそれぞれ異なる栄養素を必要としています。
ここではそれぞれの臓器の必要栄養素についてまとめてみました。
目 | ケイ素、亜鉛、ルテイン、βカロテン、銅、ビタミンC、ビタミンE、クロム |
骨 | ケイ素、マグネシウム、ビタミンB 12、ビタミンE、ビタミンK、フッ素、葉酸ホウ素、カルシウム、ビタミンD、セレニウム、銅、マンガン |
胸腺 | ケイ素、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、セレニウム、カルシウム、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12 |
神経 | ケイ素、ナトリウム、亜鉛、マグネシウム、セレニウム、カルシウム、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB 6、ビタミンB12 |
皮膚 | ケイ素、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛、ナトリウム、コラーゲン、ナイアシン、ビオチン、ビタミンB12、βカロテン、エラスチン、ビタミンA |
毛髪 | ケイ素、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、パントテン酸、ビオチン、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2 |
歯・爪 | ケイ素、マグネシウム、鉄、ビタミンE、ビオチン、カルシウム、亜鉛、フッ素、パラアミノ安息香酸、DHA |
すい蔵 | ケイ素、カルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛、タンパク質分解酵素、ビタミンB6、ビタミンA、セレニウム、イオウ、ヨード、ナトリウム |
ひ臓 | ケイ素、マグネシウム、カリウム、ビタミンC、ビタミンA、セレニウム、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、イオウ、亜鉛 |
肺 | ケイ素、セレニウム、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンE、亜鉛、カルシウム、鉄、銅 |
胃腸 | ケイ素、コラーゲン、コエンザイム、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンU、リノール酸、EPA、ビタミンB1、ビタミンB6、ナトリウム、マグネシウム |
筋肉 | ケイ素、アクチン、ビタミンC、ビタミンE、プロテイン、タンパク、ミオシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、カルシウム、マグネシウム |
脳 | ケイ素、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、マンガン、アセチルコリン、セレニウム、γ-リノレン酸、ビタミンB12、ビタミンB6、ビタミンE |
心臓 | ケイ素、マグネシウム、βカロテン、ビタミンE、亜鉛、鉄、セレニウム、EPA、DHA、葉酸、カロチノイド、カリウム、ビタミンC、タウリン、リノール酸 |
肝臓 | ケイ素、葉酸、セレニウム、ビタミンB1、ビタミンA、亜鉛、イオウ、モリブデン、クルクミン、グルタチオン、ビタミンB6、ビタミンC |
腎臓 | ケイ素、マグネシウム、カリウム、ビタミンB6、亜鉛、イオウ、EPA、DHA、グリニシン、ビタミンC、ビタミンE、セレニウム、ビタミンA |
血管 | ケイ素、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、EPA、DHA、ポリフェノール、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB1、セレニウム |
内臓六腑 | ケイ素、カリウム、ナトリウム、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンE |
血液 | ケイ素、βカロテン、マグネシウム、セレニウム、銅、葉酸、鉄、ビタミンA、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE |
リンパ節 | ケイ素、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、セレニウム、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12 |
以上のように、ケイ素はあらゆる臓器や器官の必要栄養素となっていることが分かります。
加齢とともに体内のケイ素は減少していく
ここまでケイ素が体内のあらゆるところで必要だということがお分かりいただけたかと思います。
この人間のからだにとって大切なミネラルであるケイ素ですが、残念なことに加齢とともに体内のケイ素の量は減っていってしまいます。

こちらの図表は大動脈中のケイ素の含有量を調べたデータになりますが、人間が生まれた時に持っていた体内のケイ素が、40歳になると半減してしまうことが分かっています。
ケイ素が不足することで生じると考えられているリスク
加齢とともに体内のケイ素が不足していきます。
このことでさまざまなリスクが生じる可能性があります。
それでは、ケイ素が不足することで生じるリスクについてみてみましょう。
- シミやシワが増える
- 白髪の増加や薄毛の原因のひとつに
- 爪が割れやすくなる
- 骨が弱くなり骨折や寝たきりになるリスクが高まる
- 動脈硬化の原因になる
- 認知症が進行する
- 老化が進む
このようなことがケイ素が体内で不足することで生じると考えられています。
これまでの研究によって加齢でケイ素が不足することが分かっていることから、私たちはケイ素を含む食品を摂ることを意識していく必要があります。
逆に考えると、普段から意識してケイ素を摂取することで、これらのリスクが生じる可能性を低くすることができるということです。